※ この記事には最新版「後悔しないIntel NUC 選び 2020」があります。
最近、Twitterタイムラインやガジェット系サイトで「Intel NUC」の文字をしばしば見かけるようになりました。
以前は、業務機器への組込用途やミニPCマニアがオモチャとして楽しむ等かなりニッチな商品でしたが、第8世代Coreプロセッサを搭載したNUCが登場した頃から、一般ユーザーの間にも広がりつつあるようです。
「いま家にあるデスクトップPCをリプレースしたい」とか「小さいリビングPCとして欲しい」などIntel NUCに興味を持っている人も増えていると思いますので、NUC選びのポイントについてまとめてみました。
Intel NUC 選びの注意点
まず、最初にNUCを選ぶときに一番注意しなければならない点です。
それは「Coreプロセッサ搭載モデルは第8世代以降、Atom系プロセッサ搭載モデルは第7世代以降のNUCを選ぶこと」です。
※各モデルの世代は、モデル名「NUC」の次に表記されている数字でわかります。例えば、「NUC8i7BEH」なら第8世代、「NUC5i5RYK」なら第5世代となります。
ただし、第8世代NUCはサポートされていないOS(Windows7など)がありますので、導入したいOSによっては旧世代のNUCしか選択肢にならない場合もあります。
(参考)インテルNUC製品の対応オペレーション・システムについて
理由1 大幅なCPU性能の向上
その理由の1つは、Intel Coreプロセッサは第8世代で、Atom系プロセッサは第7世代でCPU性能が大幅に向上しているからです。
例えば、第8世代の最下位モデルであるNUC8i3BEH / BEKに搭載されているCore i3-8109Uは、第7世代の最上位モデルであるNUC7i7BNHに搭載されているCore i7-7567Uの性能(CPU MARKベンチマークスコア)と大差ありません。
理由2 排熱性能の改善
また、NUCは筐体が小さいため、登場以来、排熱処理に悩まされてきました。特に、最上位のCore i7搭載モデルの排熱能力の不足は顕著で、NUC6i7KYKやNUC7i7BNHでは、高負荷時にサーマルスロッリングが発生することが頻繁にありました。
※サーマルスロットルとは パフォーマンスを落とすことによりCPUダイの温度を最大しきい値を超えないように制御する機能。
(参考)Intel NUC6i7KYKを買いました ー 購入レビュー
(参考)Intel NUC7i7BNHを買いました ー 購入レビュー
しかし、第8世代NUCはCPUクーラーのファンと排気口の大型化により、排熱性能が大幅に改善されています。CPU本来の性能を使いたいのであれば、第8世代NUCを購入することをおすすめします。
あとは、ご自分の使用目的に合わせてモデルを選べばOKです。
使用目的別のおすすめNUC
デスクトップPC用途
いま所有しているデスクトップPCのリプレースとしてNUC導入を検討しているのであれば、デスクトップPC並みに動作するCPU性能は確保したいところです。
Intel NUC8i5BEH / BEK
Intel Coreプロセッサ搭載のスタンダードモデル。NUC8i5BEH / BEKに搭載されているCore i5-8259Uは、4コア/8スレッドのCPUで、文書作成だけでなく、画像作成、簡単な動画編集までこなす優れたCPUです。このCPUで困る人は、高度な動画編集や並列演算を行う人くらいでしょう。
リビングPC用途
リビングでストリーミング動画を観たり、ブラウザーを使った検索やネットショッピングを楽しむぐらいであれば、上位モデルは必要ありません。最新モデルであれば、下位モデルのCPUに搭載されているグラフィックス機能(iGPU)も、4K@60Hzをサポートしています。
NUC8i3BEH / 8i3BEK
NUC8i3BEH / BEKはIntel Coreプロセッサ搭載の下位モデル。搭載されているCPU Core i3-8109Uは2コア/4スレッドですが、第7世代の最上位モデルに搭載されていたCore i7-7567Uと同程度の性能があるため、リビングPCとしては十分すぎるものです。また、iGPUは上位モデルと同じIntel iris Plus Graphics 655を搭載しています。
NUC7PJYH
Atom系プロセッサ搭載モデル。Coreプロセッサ搭載モデルの性能には全く及びませんが、4K@60Hzに対応しています。動画再生だけなら、このモデルで十分かもしれません。NUC7PJYHの搭載CPUのPentium Silver J5005は、Atom系プロセッサながら、第5世代のCore i3-5005Uと同程度の性能になっています。
NUC8i5INH(2019.8.3追記)
2019年第2四半期に登場したモデルで、内蔵GPUにIntel UHD Graphicsではなく、AMD Radeon RX540Xを搭載したNUC”Islay Canyon”です。Radeon RX540Xの性能は、Ryzen 5 2400G/3400Gの内蔵GPUであるRadeon RX Vega 11より高性能で、Radeon RX550とほぼ同性能といわれています。
また、CPUも4コア/8スレッドのCore i5-8265Uを搭載しており、必要十分な処理能力があります。
このモデルの残念な部分は、メモリがマザーボード直付けで増設不可という点。メモリ容量は8GBあるので、一般的な使い方で不足するケースは稀だとみられますが、Photoshopによる画像編集など大量のメモリを消費するグラフィックス用途には向いていないと言えるでしょう。
カジュアルゲームと映画鑑賞などリビング用途にピッタリのNUCです。
※このモデルは、他のNUCのようなベアボーンKitではなく、メモリとSSD(またはOptane Memory+HDD)、Windows10ライセンスが付属しています。
グラフィックス用途
NUCの通常モデルは、内蔵GPUとしてIntel Iris Plus GraphicsかIntel HD / UHD Graphicsを搭載していますが、AMD Radeon RXを搭載しているモデルが一部にあります。グラフィクス用途であれば、こうしたGPU性能の高いNUCを選びたいです。
NUC8i7HVK / HNK Hades Canyon
4コア/8スレッドのCoreプロセッサに、内蔵GPU「AMD Radeon RX Vega M」をブチ込んだIntel Core i7-8809G / i7-8705Gを搭載したハイパフォーマンス・モデル。本体サイズが通常モデルの2倍あるためNUCらしさは少なく、髑髏のロゴもあるため、好みは分かれるモデルです。
ただ、その性能はNUCの枠を超えています。内蔵GPUのRadeon RX Vega M GH(8i7HVK)とGL(8i7HNK)は、同じAMD製Ryzen 5 2400Gの内蔵GPUであるVega 11よりも遥かに高性能です。
その性能は、外付けGPU(dGPU)であるnVIDIA GeForce GTX 1050Ti前後、AMD Radeon RX 560~RX570程度です。写真加工やイラスト作成など2Dグラフィックス作成、軽い動画編集には必要十分な性能です。
扱うグラフィックスに応じて、NUC8i7HVK(Vega M GH)か、NUC8i7HNK(Vega M GL)を選ぶといいでしょう。
次期ハイパフォーマンスNUCは、内蔵GPUを搭載しないようなので、僕ももう1台買っておきたいくらい素晴らしい製品です。
(参考)Intel NUC8i7HVK Hades Canyon を買いました ー 購入レビュー
ゲーミング用途
NUCをゲーミング用途で使うなら、なるべく性能の高いモデルを選びたいです。
NUC8i7HVK Hades Canyon
前述の「グラフィック用途」項目で紹介したNUC8i7HVKです。NUC単体でゲームを楽しむならこのモデル以外の選択肢はありません。
NUC8i7HVKには8i7HNKにはないオーバークロック機能がありますし、搭載GPUの「Radeon RX Vega M GH」は、外付けGPUのエントリーモデルであるnVIDIA GeFore GTX1050Tiよりもグラフィックス性能が高いので、多くのゲームを楽しむことができるでしょう。
NUC8i7BEH + GPUボックス
NUC単体ではなく、外付けGPUボックスと接続してゲームを楽しむのであれば、NUCで最も処理速度の速いCPU Core i7-8559U を搭載したNUC8i7BEHが良いでしょう。
(参考)Intel NUC8i7BEH Bean Canyon を買いました ー 購入レビュー
Core i7-8559Uの性能は、つい最近までメインストリーム向けで上位モデルだったCore i7-7700Kと、ほとんど変わらない性能です。
総括 ー ベストバランスは「NUC8i5BEH」
使用目的別におすすめIntel NUCをまとめてみました。
Hades Canyonを除いて外観がほぼ同じでありますが、搭載されているCPUによって、割と棲み分けされたラインナップになっています。それぞれが自分の使途と照らし合わせて、それに合うモデルを選ぶことが「後悔しないIntel NUC選び」のコツでしょう。
なお、もし「おすすめモデルはどれですか」と聞かれるなら、十分なCPU性能と排熱性能、価格のバランスがとれた「NUC8i5BEH」をおすすめします。